心と疲れ
内向型が生きづらいのはなぜ? その正体と、ラクになる考え方
職場の飲み会がつらい。雑談の輪にうまく入れない。会議で発言できず、評価されていない気がする。内向型の人が「生きづらい」と感じる場面は、日常のあちこちにあります。結論から言うと、内向型の生きづらさの多くは、内向型そのものの欠陥から生まれているわけではありません。外向的な振る舞いを前提にした環境と、その環境でうまくできない自分を責める考え方のくせ。この2つが重なったときに、生きづらさは強くなります。この記事では、その正体を整理したうえで、研究にもとづく具体的な考え方と、「演じる」でも「こもる」でもない第三の選択肢を紹介します。
この記事の要点
- 内向型の生きづらさは、「外向型を前提にした環境」と「自分を責める考え方のくせ」が重なって生まれやすい。
- 飲み会、雑談、会議、「明るく元気に」という職場の空気は、外向的な振る舞いを評価しやすい仕組みになっている。
- 出来事の見方を変える「認知的再評価」と、気持ちに名前をつける「感情のラベリング」は、研究で調べられている実践的な道具。
- 外向型を演じ続けるのでも、「そのままでいい」で止まるのでもない、自分に合った中間点(中庸)を探すことがラクになる近道です。
内向型が生きづらいと感じる理由(結論)
内向型の生きづらさとは、静かな環境や深い思考を好む内向型の性質と、外向的な振る舞いを良しとする周囲の期待とのずれによって生じる、消耗感や自己否定感のことです。
この生きづらさは、2つの層に分けると見えやすくなります。1つは「外側の層」で、環境や評価の仕組みが外向型向けにできていること。もう1つは「内側の層」で、その環境でうまくいかない自分を、必要以上に厳しく評価してしまうことです。
外側の層は、すぐには変えられないこともあります。けれど内側の層は、考え方の使い方を練習することで少しずつ変えていけます。そして内側が変わると、外側の環境との付き合い方も変わっていきます。内向型の基本的な特徴を確認したい方は、内向型とは? 特徴・原因・強みの総合ガイドも参考にしてください。
社会が「外向型向け」にできているという視点
作家のスーザン・ケインは、2012年の著書『Quiet』(邦訳『内向型人間の時代』)で、社交的で、自信に満ちて、人前で目立つことを理想とする価値観を「外向型の理想(Extrovert Ideal)」と呼びました。そして、こうした価値観が20世紀のアメリカで広がり、学校や職場の仕組みに深く入り込んでいった経緯をたどっています。
この本は世界的なベストセラーになり、「内向型が生きづらいのは、自分のせいだけではなかった」と感じた読者も多かったはずです。一方で、この本は学術論文ではなく、研究や取材をもとにした一般向けの書籍です。また、アメリカ社会を中心に書かれているため、日本にそのまま当てはまるとは限りません。
それでも、「評価の基準そのものが外向的な振る舞いに寄っているかもしれない」という視点は、日本の職場を考えるうえでも役に立ちます。
日本の職場で内向型がつまずきやすい場面
ご相談でよく聞くのは、次のような場面での悩みです。どれも、内向型の能力が足りないというより、場の仕組みが外向的な振る舞いを前提にしていることで負担が大きくなっています。
| 場面 | 内向型にとっての負担 | 見落とされやすい内向型の持ち味 |
|---|---|---|
| 飲み会・懇親会 | 大人数、騒がしさ、長時間、参加が「やる気」の証明とされがち | 少人数や1対1での、深く信頼できる関係づくり |
| 雑談 | 目的のない会話を即興で続けることにエネルギーを使う | 相手の話をよく聞き、本質的な話題に進める力 |
| 会議 | 考えがまとまる前に発言を求められ、「発言量」で評価されやすい | じっくり考えた上での、的確な意見や書面での提案 |
| 「明るく元気に」という空気 | 声の大きさや表情の豊かさが、そのまま意欲や能力と見なされやすい | 落ち着き、慎重さ、周囲を観察する力 |
こうした場面で苦しくなるのは自然なことです。ただし、内向型の持ち味は、場の設計や伝え方を少し変えるだけで発揮しやすくなります。具体的な強みについては内向型の強みで、雑談の負担を減らすコツは内向型の人間関係と雑談のコツで詳しく紹介しています。
生きづらさを深める「自分を責めるくせ」
環境とのずれがあるだけなら、「この場は自分に合わない」と受け止めることもできます。生きづらさが深くなるのは、そのずれを「自分がダメだからだ」と解釈してしまうときです。
精神科医のデビッド・バーンズは、1980年の著書『Feeling Good』(邦訳『いやな気分よ、さようなら』)で、気分を落ち込ませやすい考え方のくせを「認知のゆがみ」として10のパターンに整理しました。これは認知療法の考え方を一般向けに紹介したもので、内向型の人がはまりやすいものもいくつか含まれています。
| 浮かびやすい考え | 考え方のくせ | 別の見方の例 |
|---|---|---|
| 会議で一度も発言できなかった。自分は無能だ | レッテル貼り | 今日は発言できなかった。考えはあるので、会議後にメールで共有できる |
| 飲み会で浮いていた。みんな自分を変なやつだと思っている | 心の読みすぎ | 相手の考えは確かめていない。隣の人とは落ち着いて話せていた |
| 雑談が苦手な自分は、どこへ行ってもうまくいかない | 一般化のしすぎ | 大人数の雑談は苦手だが、1対1ではうまく話せることが多い |
| 社会人なら、もっと明るく振る舞うべきだ | 「べき」思考 | 明るさは1つのスタイル。誠実さや丁寧さで信頼を得る方法もある |
| 完璧に話せないなら、話さないほうがまし | 全か無か思考 | 7割の完成度でも、伝える価値のある意見はある |
考え方のくせに気づくことは、自分を責める材料を増やすためではありません。「事実」と「自分の解釈」を分けて見るための手がかりです。
気持ちをラクにする2つの道具
考え方のくせに気づいたら、次は具体的に気持ちを整える道具を使ってみましょう。ここでは、研究で調べられている2つの方法を紹介します。
道具1:出来事の見方を変える「認知的再評価」
認知的再評価(リアプレイザル)とは、ある出来事の意味づけを別の角度から捉え直すことで、感情の反応を変える方法です。
オクスナーらは2002年、ネガティブな画像を見るときに、その状況を感情的でない言葉で捉え直してもらう実験をfMRI(脳の活動を画像化する装置)で行いました。その結果、捉え直しによってネガティブな感情の強さが下がり、前頭前野の一部の活動が高まり、扁桃体(感情の反応に関わる部位)などの活動が低下していました。
また、グロスとジョンは2003年、日常的に再評価を使う傾向がある人ほど、ポジティブな感情が多く、幸福感も高い傾向があると報告しています。ただしこちらは相関を示した研究で、「再評価をすれば必ず幸福になる」と証明したものではありません。オクスナーらの実験も、実験室での短時間の反応を調べたものです。それでも、「捉え方を変えると感じ方が変わる」という方向性は、多くの研究で繰り返し調べられています。
- 出来事を事実だけで書く「会議で発言しなかった」のように、評価を入れずに書きます。
- 浮かんだ考えを書く「自分は無能だ」など、頭に浮かんだ言葉をそのまま書き出します。
- 別の見方を1つだけ探す「友人が同じ状況だったら、何と声をかけるか」と考えると見つけやすくなります。無理に前向きにする必要はなく、「少し現実的な見方」で十分です。
道具2:気持ちに名前をつける「感情のラベリング」
もう1つの道具は、いま感じている気持ちに言葉で名前をつけることです。リーバーマンらは2007年、感情を表す表情の画像を見せたとき、その感情に合う言葉を選んでもらう条件では、言葉を使わずに処理する条件よりも、扁桃体の反応が小さかったと報告しました。
この研究も実験室で行われた脳画像研究で、日常生活での長期的な効果を直接示したものではありません。とはいえ、「モヤモヤ」を「焦り」「恥ずかしさ」「疲れ」などの言葉にするだけで、少し距離を取りやすくなる感覚は、多くの人が体験的にも知っているのではないでしょうか。
- つらいと感じたら、心の中で「いま、焦りを感じている」と実況する
- 「最悪」「無理」など大きな言葉ではなく、「がっかり」「緊張」など具体的な言葉を選ぶ
- 1日の終わりに、その日強く感じた気持ちを3つだけメモする
土台になる「自分へのやさしさ」
心理学者クリスティン・ネフは2003年、自分に向ける思いやりを「セルフ・コンパッション」として整理しました。失敗したときに自分を厳しく責めるのではなく理解を向けること、つらさは自分だけのものではないと捉えること、つらい気持ちに飲み込まれずにバランスよく気づくこと、の3つが柱です。再評価やラベリングを「自分を矯正する道具」ではなく「自分をいたわる道具」として使うと、続けやすくなります。
「外向型を演じる」も「そのままでいい」も、それだけでは苦しい
内向型の生きづらさに対しては、大きく2つの方向のアドバイスがよく聞かれます。どちらにも一理ありますが、どちらか一方だけでは苦しさが残りやすいのです。
罠1:外向型を演じ続ける
「もっと明るく」「積極的に発言を」という方向です。実際、心理学者ブライアン・リトルは、人は大切な目的のためなら本来の気質と違う振る舞いもできると考え、これを「自由特性」と呼びました。演じること自体は悪いことではありません。
ただしリトルは、気質に反した振る舞いを長く続けると消耗するため、本来の自分に戻れる「回復の場所」が必要だとも述べています。目的も回復もないまま演じ続けると、疲れが積み重なり、「本当の自分はどこにいるのか」という空しさにつながることがあります。人と会ったあとの疲れの仕組みは、内向型が人と会うと疲れる理由と回復法で詳しく書いています。
罠2:「そのままでいい」で止まる
反対に、「内向型はそのままでいい」「無理に変わらなくていい」という方向もあります。自分を否定し続けてきた人にとって、この言葉は大きな救いになります。私もこの言葉の大切さは否定しません。
ただ、「そのままでいい」だけで止まると、苦手な場面をすべて避けるようになり、仕事の選択肢や人とのつながりが少しずつ狭まっていくことがあります。環境とのずれ自体は残ったままなので、生きづらさの根っこは変わりません。
第三の選択肢:中庸という考え方
私たち合同会社内向型が大切にしているのは、この二択の外にある「第三の選択肢」です。外向型を演じて消耗するのでもなく、内にこもって停滞するのでもない。自分にとって最適な刺激の領域、つまり「中庸」に立つという考え方です。
| 場面 | 演じて消耗する | こもって停滞する | 中庸に立つ |
|---|---|---|---|
| 飲み会 | 毎回二次会まで参加し、翌日ぐったりする | 一切参加せず、職場で孤立感が強まる | 大事な会は一次会だけ参加し、少人数で話せる相手を見つける |
| 会議 | 無理に発言を増やそうとして空回りする | 何も言わず、考えがあっても伝えない | 事前に意見を1つ用意する。言えなければ会議後に文章で伝える |
| 雑談 | 盛り上げ役を演じ続ける | 話しかけられないよう距離を置く | 質問と聞き役を軸に、短い雑談を自分のペースで続ける |
中庸は「ほどほどで妥協する」という意味ではありません。自分の性質を理解したうえで、どの場面でどれだけ力を使い、どこで回復するかを、自分で選ぶことです。変えるのは性格ではなく、脳の使い方。性質は100%保ったまま、使い方だけを書き換える。私たちはそう考えています。
この考え方の背景にある研究は中庸メソッド(認知科学・中庸思想・脳神経科学)で紹介しています。働き方そのものを見直したい方は内向型に向いている仕事と働き方もあわせてどうぞ。
今日からできる小さな一歩
生きづらさは、一度に解消するものではありません。小さな調整を積み重ねることで、少しずつ「ここなら大丈夫」と思える範囲が広がっていきます。
- つらかった場面を1つ書き出すこの1週間で、いちばん消耗した場面を1つ選び、何があったかを事実だけで書きます。
- 外側と内側に分けるその場面のつらさのうち、環境によるもの(騒がしさ、時間の長さなど)と、自分の解釈によるもの(「自分はダメだ」など)を分けてみます。
- 内側には、ラベリングと再評価を使うそのときの気持ちに名前をつけ、別の見方を1つ書き添えます。
- 外側には、小さな調整を1つ決める「一次会で帰る」「会議前に意見を1つメモする」など、次に同じ場面が来たときに試すことを1つだけ決めます。
- 回復の時間を先に予約するその予定の前後に、一人で過ごす時間をカレンダーに入れておきます。
つらさが強いときは、一人で抱えない
ここで紹介した方法は、日常の生きづらさを少し軽くするためのものです。気持ちの落ち込みが強いときに、自分だけで何とかしようとする必要はありません。
注意
気分の落ち込みや不安が2週間以上続く、眠れない・食欲が大きく変わった、仕事や日常生活に支障が出ている、「消えてしまいたい」と考えることがある。こうした場合は、内向型の気質だけでは説明できない可能性があります。心療内科・精神科などの医療機関や、職場の産業医、自治体などの公的な相談窓口に、早めに相談してください。
内向型であることは、直すべきものではありません。同時に、生きづらさをそのまま我慢し続ける必要もありません。自分の性質を理解し、考え方と環境を少しずつ調整していく。その過程を一人で進めるのが難しいと感じたら、内向型の性質を前提にした内向型専門のコーチングという選択肢もあります。
参考文献
- Cain, S.(2012).Quiet: The power of introverts in a world that can't stop talking.Crown Publishers.(古草秀子訳『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』講談社,2013年)
- Burns, D. D.(1980).Feeling good: The new mood therapy.William Morrow.(野村総一郎ほか訳『いやな気分よ、さようなら』星和書店,1990年)
- Ochsner, K. N., Bunge, S. A., Gross, J. J., & Gabrieli, J. D. E.(2002).Rethinking feelings: An fMRI study of the cognitive regulation of emotion.Journal of Cognitive Neuroscience, 14(8), 1215–1229.
- Gross, J. J., & John, O. P.(2003).Individual differences in two emotion regulation processes: Implications for affect, relationships, and well-being.Journal of Personality and Social Psychology, 85(2), 348–362.
- Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M.(2007).Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli.Psychological Science, 18(5), 421–428.
- Neff, K. D.(2003).Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself.Self and Identity, 2(2), 85–101.
- Little, B. R.(2014).Me, myself, and us: The science of personality and the art of well-being.PublicAffairs.(児島修訳『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』大和書房,2016年)
よくある質問
内向型が生きづらいと感じるのはなぜですか?
大きく2つの要因が重なるためです。1つは、飲み会や雑談、発言の多さが評価される会議など、外向的な振る舞いを前提にした環境。もう1つは、そうした場でうまくできない自分を「ダメだ」と責めてしまう考え方のくせです。
内向型は直したほうがいいのでしょうか?
内向型は直すべき欠点ではありません。ただ、「そのままでいい」と現状を受け入れるだけでは、環境とのずれは残ります。性質はそのままに、刺激との付き合い方や考え方の使い方を調整していくのが現実的です。
生きづらさを軽くするために、すぐできることはありますか?
つらいと感じた場面で、いま感じている気持ちに「焦り」「恥ずかしさ」などと名前をつけること、そして出来事の別の見方を1つ書き出すことから始められます。どちらも研究で感情を和らげる働きが調べられている方法です。
生きづらさが強いときは、どこに相談すればいいですか?
気分の落ち込みや不安が続く、眠れない、日常生活に支障が出ている場合は、心療内科・精神科などの医療機関、職場の産業医、自治体などの公的な相談窓口に相談してください。内向型の気質だけで抱え込まないことが大切です。