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内向型はリーダーに向いていない? 研究でわかる内向型リーダーの強みと育ち方

西村 悠貴 公開 11分で読めます

「リーダーは、明るく話がうまい人がなるもの」。そう思い込んで、昇進や役割を前に不安を感じている内向型の方は少なくありません。結論から言うと、内向型でもリーダーは十分に務まります。外向的な人のほうがリーダーに選ばれやすい傾向は確かにありますが、メンバーが主体的に動くチームでは、内向的なリーダーのほうが成果を上げたという研究もあります。この記事では、内向型リーダーの強みを研究にもとづいて整理し、つまずきやすい点、1on1や会議の進め方、疲れないためのエネルギー管理まで、明日から使える形でお伝えします。

この記事の要点

  • 外向的な人はリーダーに「選ばれやすい」傾向がありますが、それはリーダーとしての「成果」とは別の話です。
  • Grantらの研究では、主体的なメンバーがいるチームでは、内向的なリーダーのほうが高い成果につながっていました。
  • 内向型リーダーの強みは、受け止める力、考えてから話す落ち着き、1対1の信頼関係、文章で方向を示す力です。
  • 苦手な場面は「準備・集中・一歩踏み出す・反復」の4つの手順で備え、1on1や会議は仕組みで回すのが内向型に合ったやり方です。

内向型リーダーは務まるのか:結論と前提

内向型リーダーとは、刺激の少ない環境で力を発揮しやすい内向型の気質を持ちながら、聴く力や熟考する力を生かしてチームを導くリーダーのことです。

まず、正直に押さえておきたい研究があります。性格とリーダーシップの関係を調べた研究をまとめたメタ分析では、外向性はリーダーシップともっとも一貫して関連する性格特性でした(Judge, Bono, Ilies, & Gerhardt, 2002)。外向的な人のほうが、リーダーとして高く評価されやすい傾向があるということです。

ただし、同じ研究では、外向性との関連は「リーダーとして選ばれること」で強く、「リーダーとして成果を出すこと」ではそれより弱いことも示されています。集団の中で積極的に発言する人は、リーダー役に推されやすい。けれども、選ばれやすさと、チームを成功に導けるかどうかは、同じではありません。

この「選ばれやすさ」と「成果」のずれに光を当てたのが、次に紹介する研究です。内向型の気質そのものについては内向型とは? 総合ガイドで詳しく解説しています。

内向型リーダーの研究:Grant, Gino & Hofmann(2011)

組織心理学者のアダム・グラントらは、2011年に経営学の主要な学術誌に、外向的なリーダーの有利さが逆転する条件を調べた論文を発表しました(Grant, Gino, & Hofmann, 2011)。研究は2つの調査で構成されています。

研究1:ピザチェーン店の現場調査

全米展開するピザ宅配チェーンの57店舗を対象に、店長の外向性と、従業員がどれだけ主体的に改善提案などを行っているかを調べ、店舗の利益との関係を分析しました。

その結果、従業員が受け身なお店では、外向的な店長のほうが利益が高い傾向がありました。反対に、従業員が主体的なお店では、外向性の低い店長のほうが利益が高い傾向が見られました。

研究2:大学生のグループ実験

次に、大学生のグループにTシャツをたたむ作業で成果を競ってもらう実験を行いました。グループの中には、より効率的なたたみ方を提案する役の協力者が含まれています。リーダー役の学生は、事前に「外向的なリーダーシップが成功の鍵」または「内向的なリーダーシップが成功の鍵」とする文章を読み、振る舞い方が変わるよう誘導されました。

結果は研究1と同じ方向でした。メンバーが主体的に提案するグループでは、外向性の低い振る舞いをしたリーダーのほうが、提案を受け入れやすく、グループの成果も高くなりました。

この研究から言えること、言えないこと

研究の解釈として、外向的なリーダーは自分が話す側に回りやすく、メンバーの提案を受け止めにくい場合があると考察されています。主体的なメンバーにとっては、自分の提案が聴いてもらえないことが、意欲を下げる原因になりえます。

一方で、限界もあります。研究1は特定のチェーン店のデータであり、研究2は大学生を対象にした短時間の実験です。また、研究2で比べられたのは生まれつきの気質ではなく、リーダーの「振る舞い方」でした。つまりこの研究は、「内向型のほうが優れたリーダーだ」と示したものではありません。チームの状態と、リーダーの振る舞いの組み合わせが成果を左右することを示した研究と読むのが正確です。

ポイント

研究2で成果を分けたのが「振る舞い方」だったことは、内向型にとって希望のある結果です。リーダーとしての成果は、性格を変えなくても、振る舞いと仕組みの工夫で高めていけるということを示しているからです。

内向型リーダーの5つの強み

研究と実務の両面から、内向型リーダーが持ちやすい強みを5つに整理します。内向型の強み全般については内向型の強みと活かし方で、根拠の強さとあわせて解説しています。

  1. 受け止める力メンバーの提案を最後まで聴き、取り入れられる。Grantらの研究が示したように、主体的なメンバーの力を引き出す場面でとくに生きる強みです。
  2. 考えてから話す落ち着き即断を求められる場面でも、情報を整理してから判断する傾向があります。重要な決定ほど、この慎重さが信頼につながります。
  3. 1対1で信頼を築く力大人数の場より、少人数や1対1の対話を好む傾向は、メンバー一人ひとりと深い関係をつくる力になります。
  4. 文章で方向を示す力方針や判断の理由を、文章で丁寧に伝えられます。口頭での熱量に頼らず、メンバーがあとから読み返せる形で方向性を共有できます。
  5. 場を譲れること自分が中心に立ち続けなくても平気でいられるため、メンバーに発言や活躍の機会を渡しやすくなります。

内向型リーダーがつまずきやすい点

強みがある一方で、内向型リーダーが陥りやすい落とし穴もあります。ご相談でよく聞くのは、次のような悩みです。

  • 考えていることが周囲に伝わらず、「何を考えているかわからない」と言われる
  • 方向性を示す場面で、遠慮して強く言い切れない
  • 人に頼むより自分でやったほうが早いと考え、仕事を抱え込む
  • 会議や面談が続き、夕方には判断力が落ちている

もうひとつ見落とされやすいのが、チームの状態との組み合わせです。Grantらの研究では、メンバーが受け身なチームでは、外向的なリーダーのほうが成果が高い傾向がありました。メンバーがまだ自分から動けない段階では、受け止めるだけでなく、リーダーが方向と期限をはっきり示す必要があります。内向型リーダーは、チームの状態に合わせて「受け止める」と「引っ張る」の比率を調整することが求められます。

苦手な場面に備える:カーンウェイラーの「4P」

内向型リーダーについて多くの著書があるエグゼクティブコーチのジェニファー・カーンウェイラーは、内向型が苦手な場面に向き合うための手順として「4P」を提案しています(Kahnweiler, 2018)。性格を変えるのではなく、今の自分のまま取り組むことを重視した方法です。

  1. 準備(Preparation)不安を感じやすい場面に向けて、事前に計画を立てます。会議で伝える要点、面談で聞く質問、想定される反論への答えを書き出しておきます。
  2. 集中(Presence)準備ができたら、本番ではその場に意識を向けます。次に何を言うかを考え続けるより、相手の話と目の前のやりとりに集中します。
  3. 一歩踏み出す(Push)準備と集中を土台に、居心地のよい範囲から少しだけ外に出ます。発言をひとつ増やす、苦手な相手に自分から声をかける、といった小さな挑戦です。
  4. 反復(Practice)一度で慣れようとせず、繰り返します。回数を重ねるほど、同じ場面での消耗は小さくなっていきます。

この方法は、実務家としての経験にもとづく整理であり、効果が実験で検証されたものではありません。ただ、内向型の得意な「準備」を入り口にする点で、取り組みやすい枠組みだと考えます。なお、同じ著者の本では、日本語で読めるものとして『内向型人間がもつ秘めたる影響力』があります(Kahnweiler, 2013)。

内向型リーダーの1on1のコツ

1on1(上司と部下の定期的な1対1の面談)は、1対1の対話を得意とする内向型リーダーにとって、強みを生かしやすい場です。一方で、何を話せばいいかわからず、沈黙が気まずいと感じる方もいます。次の流れを型として持っておくと、安心して臨めます。

  1. 話題を事前に集める前日までに、メンバーに「話したいことがあれば一言ください」と伝えておきます。自分の側でも、聞きたいことを2〜3個メモしておきます。
  2. 最初に相手の話を聴く1on1はメンバーのための時間です。冒頭は「最近どうですか」ではなく、「今週いちばん時間を使ったことは何でしたか」のように、答えやすい具体的な質問から始めます。
  3. 沈黙を待つ質問のあとの沈黙は、相手が考えている時間です。内向型リーダーは、沈黙を急いで埋めずに待てることが強みになります。
  4. 決めたことを文章で残す面談のあとに、話した内容と次の行動を短いメッセージで共有します。言葉にしきれなかった感謝や評価も、文章なら丁寧に伝えられます。

注意

1on1を1日に何件も詰め込むと、後半は聴く力が落ちやすくなります。件数の多い日は、1件ごとに5〜10分の空白を置き、メモを整理する時間にあてましょう。

内向型リーダーの会議ファシリテーション

会議の進行役は、内向型リーダーにとって負担の大きい仕事のひとつです。けれども、会議は「声の大きい人が勝つ場」から「全員の考えを集める場」へ、仕組みで変えられます。

集団のブレインストーミングを調べた研究では、誰かが話している間はほかの人が発言できないことが、アイデアの量を減らす大きな原因だと考えられています(Diehl & Stroebe, 1987)。会議の研究で知られる組織心理学者のスティーブン・ロゲルバーグは、その対策として、話す前に各自がアイデアを書き出す「ブレインライティング」を勧めています(Rogelberg, 2019)。

  1. アジェンダを前日までに共有する議題と、会議で決めたいことを事前に伝えます。考える時間を会議の前に移すことで、内向的なメンバーも意見を準備できます。
  2. 最初の数分は書く時間にする議題ごとに、まず各自が意見を書き出してから共有します。声の大きさや発言の速さに左右されず、全員の考えが集まります。
  3. 発言の順番を設計する「一人ずつ順番に」と決めると、発言しにくいメンバーにも機会が回ります。
  4. 自分の意見は最後に述べるリーダーが先に意見を言うと、議論がそちらに引っ張られます。受け止める強みを生かし、まず全員の考えを聴いてから判断を示します。
  5. 決定事項を文章でまとめる会議の最後に、決まったこと、担当者、期限を確認し、当日中に文章で共有します。

メンバーの立場で会議に参加するときのコツは、内向型に向いている仕事と働き方でも紹介しています。

リーダーのエネルギー管理:疲れない仕組みをつくる

リーダーになると、人と関わる時間はどうしても増えます。日常生活での行動と疲れを追跡した研究では、外向的に振る舞った直後は気分がよくなる一方、数時間後には疲労が高まる傾向が見られました(Leikas & Ilmarinen, 2017)。小規模な研究ではありますが、リーダーの仕事の後半に疲れが出やすい理由を考えるヒントになります。

心理学者のブライアン・リトルは、人は大切な目的のために本来の気質とは違う振る舞いを選べる一方で、そのあとに本来の自分に戻れる「回復の場所」が必要だと述べています(Little, 2014)。内向型リーダーにとっては、この回復の場所を予定に組み込むことが、仕事の一部だと言えます。

  • 1on1や会議を特定の曜日・時間帯にまとめ、集中作業の時間と分ける
  • 人と会う予定が続く日は、昼休みの一部を一人で過ごす
  • 大きな会議や発表の直後には、重い判断の予定を入れない
  • 週に半日程度、予定を入れない「考える時間」を確保する

疲れの仕組みと回復の方法は内向型が人と会うと疲れる理由と回復法で詳しく解説しています。疲れや気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れないといった状態がある場合は、気質だけの問題とは限りません。早めに医療機関や専門家に相談してください。

内向型リーダーの実践プレイブック

ここまでの内容を、1週間の行動の型としてまとめます。すべてを一度に始める必要はありません。取り入れやすいものから試してみてください。

タイミングやること生かす強み
週のはじめ今週の優先事項と方針を、チームに文章で共有する文章で方向を示す力
会議の前日アジェンダと決めたいことを送る準備する力
会議中書く時間をとり、自分の意見は最後に述べる受け止める力
1on1具体的な質問から始め、沈黙を待つ1対1で信頼を築く力
人と会う予定の後10分の空白で、メモと気持ちを整理する考えてから話す落ち着き
週の終わりチームの状態を振り返り、受け止めると引っ張るの比率を見直す深く考える力

外向型リーダーを演じなくていい

内向型の人がリーダーになったとき、多くの人が「外向的なリーダーにならなければ」と考えます。その結果、無理に演じて消耗するか、リーダーの役割から距離を置いて停滞するか、どちらかに追い込まれがちです。

合同会社内向型では、その二択の外にある「第三の選択肢」を大切にしています。刺激が多すぎも少なすぎもしない、自分にとって最適な領域、つまり「中庸」に立ってチームを導くという考え方です。変えるのは性格ではなく、脳の使い方です。性質は100%保ったまま、使い方だけを書き換えていきます。

Grantらの研究が示したように、リーダーとしての成果を分けるのは性格そのものではなく、チームに合わせた振る舞いと仕組みです。内向型リーダーとしての働き方を個別に整えたい方は、内向型専門コーチングもご覧ください。

参考文献

  1. Diehl, M., & Stroebe, W.(1987).Productivity loss in brainstorming groups: Toward the solution of a riddle.Journal of Personality and Social Psychology, 53(3), 497–509.
  2. Grant, A. M., Gino, F., & Hofmann, D. A.(2011).Reversing the extraverted leadership advantage: The role of employee proactivity.Academy of Management Journal, 54(3), 528–550.
  3. Judge, T. A., Bono, J. E., Ilies, R., & Gerhardt, M. W.(2002).Personality and leadership: A qualitative and quantitative review.Journal of Applied Psychology, 87(4), 765–780.
  4. Kahnweiler, J. B.(2013).Quiet Influence: The Introvert's Guide to Making a Difference.Berrett-Koehler.(境誠輝 訳『内向型人間がもつ秘めたる影響力』すばる舎, 2013)
  5. Kahnweiler, J. B.(2018).The Introverted Leader: Building on Your Quiet Strength(2nd ed.).Berrett-Koehler.
  6. Leikas, S., & Ilmarinen, V.-J.(2017).Happy now, tired later? Extraverted and conscientious behavior are related to immediate mood gains, but to later fatigue.Journal of Personality, 85(5), 603–615.
  7. Little, B. R.(2014).Me, Myself, and Us: The Science of Personality and the Art of Well-Being.PublicAffairs.(児島修 訳『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』大和書房, 2016)
  8. Rogelberg, S. G.(2019).The Surprising Science of Meetings: How You Can Lead Your Team to Peak Performance.Oxford University Press.

よくある質問

内向型はリーダーに向いていないのでしょうか?

向いていないとは言えません。研究では、外向的な人のほうがリーダーに選ばれやすい傾向がある一方、主体的に提案するメンバーがいるチームでは、内向的なリーダーのほうが成果が高いという結果も報告されています。チームの状態と、リーダーの振る舞い方の組み合わせが重要です。

内向型リーダーの強みは何ですか?

メンバーの意見を受け止めて生かす力、考えてから話す落ち着き、1対1で信頼関係を築く力、文章で方向性を示す力、そして自分が前に出すぎず場を譲れることなどが挙げられます。とくに、メンバーが主体的に動くチームで強みが生きやすいと考えられます。

内向型リーダーが会議を進めるときのコツはありますか?

アジェンダを事前に共有する、最初の数分で各自が意見を書き出す時間をとる、発言の順番を設計する、自分の意見は最後に述べる、といった工夫が役立ちます。声の大きさに頼らずに、全員の考えを集められる仕組みをつくるのがポイントです。

管理職になってから疲れやすくなりました。どうすればいいですか?

1on1や会議を特定の曜日や時間帯にまとめ、その前後に一人で考える時間を確保するのがおすすめです。外向的な振る舞いは数時間後の疲れと関連するという研究もあるため、回復の時間を予定として先に入れておきましょう。疲れや気分の落ち込みが長く続く場合は、医療機関や専門家に相談してください。

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